セワード出港のタイミングを計る・・・1

朝のニュースでアラスカ内陸の都市フェアバンクスで17インチの積雪・・・今年は異常だと報じている・・・セワードも新雪の雪線が更に下がった

ここからアラスカ内海航路(Insaide Passage)の入り口まで順調に航行できれば4日ほどの航程である

 

途中安全に避難できる港はほとんど無い

詳細な海図も入手できなかった

最低でも4日間の好天が欲しい

到着のとき未知の港で、闇夜と荒天は御免だ・・・!

天気図を検討し、全てのタイミングを計らなくてはならない

 

日本出発から使ってきた「日章旗」は風ですり減り

日の丸部分も侵食され始めている

写真上  心気一転、新しい日章旗を掲揚する・・・白地が眩しい!

 

低気圧の中心、960mb風無く快晴

巨大な低気圧の場合、台風の目の中にいるような状況になる

写真上  セワード漁港・・・中央やや左にオンディーヌ

オンディーヌを給油バースへ移動・・・軽油を満タンにする

天気も午前中はもちそうなので、そのまま出港し「復活湾」のピクニックへ

写真上  作務衣、ライフベストも着けずラフすぎ?・・・後ろはべアー氷河

 

Spoon氷河の入り江へ・・・日差しが本当に暖かい!!

写真上 懸垂氷河、Spoon Glacier

写真上  ラッコが腹の上に蛸を乗せ、千切って食べている

全く警戒していない・・・それにしても凄い食欲!!

写真上  反対側、西側のBear Glacierへ向かう

ベアー氷河から流れ出る水がミルク色に海面を染める

午後から北風が強くなり急に気温も下がる・・・漁港へ戻る

帰港すると日本の女性が待っていた

写真上  川部さん

日本のヨットが来ていると知らせてくれた人がいたと・・・

一緒にコインランドリー、スーパーマーケットと案内される

スーパーで買ったテンダーロインステーキで夕食

気象FAXによると明日は嵐・・・外は風雨始まる

Sewardへ・・・恐怖の夜間航行

9月16日、08時29分セルドビア出港

北東の風7メートル晴れ、気温6℃静かな海である

危険岬にはやはり渦潮が発生していた

 

11時風無く、昼食はカレーうどん

逆潮であまり進まない

6時、向かい風となり艇速さらに落ちる

18時、東の風21メートル悪い波が前方から押し寄せる

19時、Petrof氷河眺めが圧倒的迫力・・・カレーで夕食

20時、風強まり日没・・・23メートルの東風、機帆走にする

 

日が変わり03時、東風31メートル、艇速3.4ノット

Granite島の風影へ避難するべきか考え心が揺れる

状況としては明かに嵐である・・・妻も今までで最悪と言う

一波ごとに船首が持ち上がり、次の瞬間船底が波の底に打ち付けられ大音響とともに船体が震える!

数回に一度、大波でデッキの上を海水が覆い船体は水中に没する!

船を信じ続航することにする・・・

 

05時45分東の針路から北へ変針する

左舷側に岩礁と島々、右舷からは21メートルの風と大波

幸いレーダーで海岸線は確認できる

海岸線は高い崖で海は急深なので見切りは付けやすい

大波が来るたび、右舷に舵を切りつつ、だましだまし船を進める

 

08時、曇天ながら日が昇り明るくなる

昨夜は随分気圧が下がっていた

09時25分、Rugged島の風下に入り突然風波は収まる

Resurrection Bayに滑り込む

Resurrection「復活」

妻にとってはまさに恐怖の海からの復活であった


キラーホエール(オルカ)が悠然と海面をすべる

幅広いBear氷河が海面に落ち込んでいる

 

11時49分、セワード港Fフロートに舫を取る

夕食までぐっすり眠り

そして、また眠り込んだ・・・28時間の好い戦いだった・・・達成感がある

高山には新雪が見えた・・・・

Seldvia・・・初冬のリゾート・・・2

翌朝ハーバー事務所へ・・・停泊料一日11ドル97セント

安全な港だが風はコンスタントに22メートル

写真上  荒れる港外

最大瞬間39メートル!!・・・Williwawだ!

海図を見るとこの湾内で七隻もの沈船がマークされている

 

朝から昼寝を決め込む

昼は「葡萄の樹」、「壁の穴レトルトだが旨いパスタ

次の寄港地セワードまでの海図研究・・・140海里早くても24時間はかかりそう、海岸線は険しく、避難場所は少ない

写真上  夏はさぞ賑わうのだろう・・・人が居ないリゾート

午後風の強い村に出る・・・人が居ない

不動産の売り物がやたら多い

写真上  ロシア正教会

翌日も風強く、妻はシュークリームを作っている

「明日、凍結防止で水道は止める・・・」とハーバー事務所から連絡

明日あたり高気圧の圏内に入りそうだが・・・

 

風の中散歩へ・・・小さな村だから直ぐ森のなかへ

写真上  土産物屋のオブジェ

開いているのは一軒のバーと土産物屋一軒のみ

そしてカップルの観光客一組のみ・・・・

 

強風で洗濯物(友人から貰ったインドネシアのベットカバー)が飛んでいった!

Seldvia・・・初冬のリゾート・・・1

9月13日朝の気象FAXによると820mbの低気圧が接近してくる

ホーマーで時間を潰すより、皆が薦める近くのリゾートへ行くことにする

ハーバー事務所で5日間の停泊料50ドル、軽油50ガロン50ドルの支払いを済ませる

写真上  Gull島、この岩礁の北を行かなければならないのに・・・

ピクニック気分が災いし一つ南の湾に入り込み戸惑う

気を取り直し本来の目的地Halibut Coveへ

写真上  ハリバットコーブ桟橋(プライベート)

レストランの桟橋にはロープは張ってある・・・閉店の様子

個人桟橋に船を着け、お茶漬け昼食

写真上  ムース狩へ

近くで働いていた大工さんが来て「冬が近いから村には誰もいない・・」と言い、彼らは肉不足でこれからカリブー狩りに行くという

私達も今日の最終目的地Seldviaへ向かう

 

14時外へ出ると向かい風SW27メートル!!

急に低気圧の影響が出始めていた

写真上  セルドビア入り口

四時間向かい風と格闘しセルドビア港に滑り込む

船も身体も潮だらけだ・・・Cフロートへ着岸

漁船はほとんど無くプレジャーボートが多い

写真上  潮が引き急なスロープ・・・アラスカでは潮の満ち引きが8メートル位のところもある、当然潮流は早い

 

ほっとしてコーヒーをすすっていると外が騒がしい

近くの桟橋の下で犬が溺れている

加勢に飛び出すが大型犬でなかなか引き出せない

電動工具を出し桟橋の板を外し引き上げた・・・冷たい水だ

船で暖かいシャワーを浴びる

写真上 ダンジネスクラブ(この辺で簡単に採れる旨い蟹)

蟹玉で夕食

写真上  溺れていたのはハリバットコーブであった君だったのか・・・

小さなバーに入ると「犬の救助仲間」いる

風が強く、カリブー狩は明日以降にするという・・・

スコッチをダブルでご馳走になる・・・

 

夜は早くやってきて、風は冷たい

Homer・・・3

今回の旅で最も危険なレグを切り抜けたという達成感を感じている

残るはSewardまでと多島海の入り口Elfin Coveの2レグである

悪天候が2日続き、今までお世話になった方達へ、お礼と近況報告の便りを書いて過ごした・・・これからのルート研究、気力の充填の良い機会である

天候も回復し、空港でレンタカーを借りドライブへ

写真上 美湖さんの丘からホーマーの砂嘴

ホーマーを望む丘に登り撮影していると

写真上 丘からの眺め

洒落たコテージから出てきた長身の男性から声がかかる

「君達は日本人ですか・・・?」

綺麗な奥さんも出てくる

写真上  美湖さん夫妻と

 

Joe&Carmen Meeko夫妻

日本語が上手で、英語の名前のあとに

「美湖」と均整の取れた上手な漢字を書いてくれた

リタイアした米空軍の神父さんで

東京横田基地に勤務し日本語を覚えたという

「ここアラスカ米国で最も美しい所です・・・よくいらっしゃいました・・・」我々のゲストブックに書いてくれた

旅をしていると日本に好意を持ってくれる人の存在は何より心強い

写真上  丘の住宅地

国道に戻りロシア人の村を見学し

レストランでシュリンプカクテルローストビーフで昼食

写真上  ホーマーの海岸を見下ろす

38年前のホーマーでは

波の静かな海岸で自炊、キャンプしたことを思い出す

 

午後はスーパーで食料を買い

船内を片付け戦闘モードへ

夕食は漁港のレストランでブリトーとチキンガレット

気持ちも戦闘モードにしなくては・・・

最初のアラスカの旅

今から38年前(1973年)、私たちは初めての海外旅行ということでアラスカへ行った。貧しい結婚生活をしながらも、若いうちになるべく早く一度は海外に出て見たいと思っていた。しかしその頃、海外旅行は貧しい若者にとっては夢だった。

ナホトカまで船で行き、シベリア横断鉄道でヨーロッパへ行こうかなどとも考えた。そんな中で当時は、飛行機でヨーロッパへ行く便は、ほとんどがアンカレッジ経由の北極回りで、アンカレッジまでの運賃が一番安かった。

写真上  ホーマーの外海とキナイ半島の山々

その頃は、まだロッククライミングをしていた船長ににとって、マッキンレイや憧れていたハンチントンを見られるということも魅力で、飛行機代をローン払いでアンカレッジに行くことにした。

旅費は分割の後払いでよかったが、カードなど無い時代で滞在費は現金を作らねばならず、私は着物を質屋に持って行き、10万円を作った。往復の飛行機代は、確か1人11万8千円位だったと思うが、お給料が5万円弱の頃だ。

私たちは当時の船長の親友Sも誘い、3人でアンカレッジへ向かった。現地に着いても1ドルが320円の頃で、ホテルに泊まるなどはとても無理で、私たちは安いレンタカーを借り、ジャガイモと玉ねぎ、ベーコンとパンそれに鍋とフライパンを買いキャンプをしながら、アラスカを周った。

野宿をしていて、狼の声に3人で慌てて車に入ったこともある。真っ直ぐな道がどこまでも続き、全然車に合わないこともあった。ルピナスの花が一面に咲く広大な自然、湖に降り立つ自家用水上飛行機、白夜のサンセットクルーズのヨット、何もかもが日本では考えられない豊かさでショックだった。

私たちは憧れのステーキを食べることも出来ず、一番安いハンバーガーやパンケーキを食べ、マッキンレイ国立公園や氷河を見て周った。6泊7日のドライブを追えて、車を返しに行くと走行距離オーバーで追加料金を払うはめになった。しかしお金も底をついていて、船長はニコンを売る決心をして、買ってくれそうなカメラ屋を探した。

カメラ屋では、直接買うのではなく、欲しがっている客に連絡を付けてくれるという。飛行機の時間もあるので、あせっていたが買い手はすぐに見つかり、思っていたより良い値段で売れ、何とか無事日本へ帰ることが出来た。

ホーマーは、その時初めて本物のヨットを見て、ショックを受けた場所である。

Homer・・・2

その日の午後、一人の男が訪ねてきた

「8月15日、サンドポイント上空から挨拶したのは・・・私だ・・・」と

ハリバット(オヒョウ)を解体中にホバーリングしていたヘリの人!?

写真上  ヘリコプターのパイロット、Larryさん

「今日はオフなので一緒にフライトに行こう・・・」

写真上  ヘリのフロートはゴムボート素材・・・水にも浮く

写真上  ホーマー飛行場上空

写真上  Kachemak湾に突き出すホーマーの砂嘴・・・先端が漁港

写真上  ホーマー漁港上空

写真上  浮き桟橋中央先端にオンディーヌ

写真上  対岸のPortlock氷河上空

写真上  氷河上のモレーンに着陸

写真上  二人乗りなので妻の番

写真上  無事帰還・・・嬉しそう!

 

夕食に招待した

彼はニュージーランドワイン「Jacob’s Creek」持参、私達の好きな重いボルドータイプ・・・旨し

鮭とポークのバーベキュー、ミートボールの春雨スープ

 

ラリーさんはニュージーランド人だが、アラスカ州政府に雇われ

各地で水揚げされた水産物のサンプルをラボ(研究所?)へ運んでいるという

三年後、息子とヨットで世界一周に出るとプランを語る

長距離航海者のヨットに興味津々の様子だ

アラスカのサーモンシズンが終わると帰国し

夏のニュージーランドで息子とセーリングを楽しむという・・・

 

夜遅く外が騒がしい・・・上空に淡いオーロラが出ていた

Homer・・・1

9月8日、ハーバーマスターが税関へ連絡

新しい航行許可証はヘインツ(Haines)にて発行されると

写真上  RandiさんとボーイフレンドのMikeさん

ハーバーマスターの事務所でRandiさんが話しかけてくる

「あなた達、洗濯物があるでしょう?」

彼女の家で洗濯、その間にレストランで昼食を・・・ご馳走さま

彼女の貯めたクーポン券を持ちスーパーで買い物

Mikeさんが合流し

海図、排水ポンプの部品購入を手伝ってくれる

写真上  猫が店番・・・妻は幸せ・・・舶用部品屋

Mikeさんは漁師・・・この海域の泊地などの情報を貰う

マストを壊したウニマク海峡の強風の話をすると

「No More Unimak Winds!」と共感してくれる

海峡で操業する漁師は怖い思いをしている・・・と

 

ランディーさんはヨットで世界を巡った人・・・旅人の気持ちが解ると言う

「海人(うみんちゅう)」の的を獲た親切は心地よい・・・自分もこうありたい

写真上  ポールの高さが引き潮の深さである

心身ともにリニューアルできた・・・

旅・・・断想

大きな予定は立てるが・・・細部はどうでもいい

季節、地域、海域は重大な要素である

問題の海図は・・・完璧ではないが、何とかいつも手に入る

 

更なる要素は

天候、潮、町、村、人、動物達、補給、修理・・・目的が見えてくる

要素は突然現れ、予定の行動はいつも変わる

写真上  ホーマーの外海に面したテラス

 

常にそう上手くはいかない、束縛される・・・なすがまま!

必然は影が薄くなり、確信は常に危うい

 

どんなに待っても行きたい所は有るし・・・会いたい人がいる

そして突然の出会いに感動する自然、人物、土地があ

写真上  ホーマーの砂嘴の上のシーフードレストラン

 

だから、放浪する・・・

ホーマー(Homer)へ・・・2

9月7日、早朝から漁船全て出港していく

彼らが投錨していた場所に移動し錨を下ろす

さすがにベストポジション!

あまり奥へ投錨すると奥の岸からの返し波が船を揺らす

 

10時の気象FAXを見て私達も出港を決める

低気圧が近づきつつあり

昨夜は風がよく振れ回った

錨はしっかり効くが

水路誌によるとここは「凄いWilliwawが吹く」という

ここでWilliwawをしのぐ勇気はない

 

15時45分、Barren Is.(バーレン諸島)を越え一安心・・・下げ潮なので東側を通過した・・・島に寄せられる心配は無い

写真上  バーレン諸島

Stevenson Entrance(スティーブンソン海峡)を過ぎ、次はKennedy Entrance(ケネディー海峡)を横断することになる

 

この両海峡はAnchorage(アンカレッジ)への入り口にあたり、海流、潮流も早く大型船も難航する海域である

アラスカ本土のキーナイ半島(Kenai Peninsula)の白い山塊がかすかに見える

山塊を高層雲がすごいスピードで覆っていく

チョッピーな悪い波が続く

風上に向かう限界に近い帆走で冷たいスプレーが飛んでくる

写真上  キーナイ半島の白い山々と漁船

妻は弱気に、静かに泣いている

カレーにて夕食

写真上  Iliamna Volcano 10017フィート

19時、北西の風15m、読みどうり潮は反転し上げ潮に乗る、艇速若干上がる

はるか後方に大型船が見える・・・機帆走にし艇速8ノット

21時、Dangerous Cape(危険岬)怖い名前だ

その名のとうり岩礁近くに渦潮が発生している

写真上  ホーマーへのアプローチ

写真上  そして完全に日は沈んだ

 

22時、Homerの町の灯が見え始める・・・勇気湧く

23時、コーストガードにVHF(無線)で入港許可を求める

「湾口南東側に岩礁があるので中央をキープせよ・・・!」と注意あり

24時、舵の効く限界のスロースピードで港口に接近する

24時30分、コーストガードの指示どうり接岸す

暖かいうどんをすすり、シャワーを浴び、ビールを飲んでベットに倒れこんだ・・・本土に着いた!!