グリとニューヨーク・・・ 1 なぜかニューヨーク

グリはまだ生まれていない。先が長いので、これから時々、グリとニューヨークの事を書きたい。89年の9月に初めてニューヨークに行ってから、すっかりニューヨークのとりこになっていた。

行くまでは、怖い所とか、摩天楼とかのイメージしか持っていなくて、あの100階以上あるビルの谷間に入ったらどんな感じだろうとしか思っていなかった。

しかし、行って見て、それは想像を超えた世界だった。まず、建物がゴージャスである。1つ1つのビルが個性的で美しい。新しい都会のただ高いだけの建築ではない。そして人の多さ。多いだけではなく、皆エネルギーに満ちている。それもアジアのゴミゴミした人の多さではなく、ビジネスとアートの融和した、スピーディーでスマートでクール(カッコいい)な集団である。

また、どこにで歩いて行けるマンハッタンの狭さ、オアシスとしてのセントラルパーク、何もかも最高のものが揃っている。勿論最低の物もあるが。

最初に訪れた時、帰国する前の日に一人の日本人に会った。友だちに紹介されたジュエリーデザイナーだ。新宿2丁目のゲイバーのマスターの紹介であるから、当然彼もゲイだった。私たちは、何も偏見を持っていない。

その彼T氏は会うなり、「ねぇ、あんた達、赤ちょうちんに行かない」と誘われた。私たちは、赤ちょうちん、と半信半疑で付いて行った。着いた所はダウンタウンにあるポーランドの移民が集う汚い安酒場だった。カウンターの前にビリヤードの台がある。カウンターの上には猫が寝そべっていた。カウンターの中には、中年で太目の愛想のよい女性がカクテルを作っていた。

その夜の出会いが、決定的に私たちをニューヨークに惹きつけた。Tとは古くからの知己のようにすっかり意気投合していた。

そんな理由で、ヨットでニューヨークに着いたら、しばらく住んでみたいと思うようになっていた。

そして、それは最終的にグリのために家を買おうと言うことになる。

写真上  ヨットから降りると世界は驚くことだらけ・・・!!