Sewardへ・・・恐怖の夜間航行

9月16日、08時29分セルドビア出港

北東の風7メートル晴れ、気温6℃静かな海である

危険岬にはやはり渦潮が発生していた

 

11時風無く、昼食はカレーうどん

逆潮であまり進まない

6時、向かい風となり艇速さらに落ちる

18時、東の風21メートル悪い波が前方から押し寄せる

19時、Petrof氷河眺めが圧倒的迫力・・・カレーで夕食

20時、風強まり日没・・・23メートルの東風、機帆走にする

 

日が変わり03時、東風31メートル、艇速3.4ノット

Granite島の風影へ避難するべきか考え心が揺れる

状況としては明かに嵐である・・・妻も今までで最悪と言う

一波ごとに船首が持ち上がり、次の瞬間船底が波の底に打ち付けられ大音響とともに船体が震える!

数回に一度、大波でデッキの上を海水が覆い船体は水中に没する!

船を信じ続航することにする・・・

 

05時45分東の針路から北へ変針する

左舷側に岩礁と島々、右舷からは21メートルの風と大波

幸いレーダーで海岸線は確認できる

海岸線は高い崖で海は急深なので見切りは付けやすい

大波が来るたび、右舷に舵を切りつつ、だましだまし船を進める

 

08時、曇天ながら日が昇り明るくなる

昨夜は随分気圧が下がっていた

09時25分、Rugged島の風下に入り突然風波は収まる

Resurrection Bayに滑り込む

Resurrection「復活」

妻にとってはまさに恐怖の海からの復活であった


キラーホエール(オルカ)が悠然と海面をすべる

幅広いBear氷河が海面に落ち込んでいる

 

11時49分、セワード港Fフロートに舫を取る

夕食までぐっすり眠り

そして、また眠り込んだ・・・28時間の好い戦いだった・・・達成感がある

高山には新雪が見えた・・・・

Seldvia・・・初冬のリゾート・・・2

翌朝ハーバー事務所へ・・・停泊料一日11ドル97セント

安全な港だが風はコンスタントに22メートル

写真上  荒れる港外

最大瞬間39メートル!!・・・Williwawだ!

海図を見るとこの湾内で七隻もの沈船がマークされている

 

朝から昼寝を決め込む

昼は「葡萄の樹」、「壁の穴レトルトだが旨いパスタ

次の寄港地セワードまでの海図研究・・・140海里早くても24時間はかかりそう、海岸線は険しく、避難場所は少ない

写真上  夏はさぞ賑わうのだろう・・・人が居ないリゾート

午後風の強い村に出る・・・人が居ない

不動産の売り物がやたら多い

写真上  ロシア正教会

翌日も風強く、妻はシュークリームを作っている

「明日、凍結防止で水道は止める・・・」とハーバー事務所から連絡

明日あたり高気圧の圏内に入りそうだが・・・

 

風の中散歩へ・・・小さな村だから直ぐ森のなかへ

写真上  土産物屋のオブジェ

開いているのは一軒のバーと土産物屋一軒のみ

そしてカップルの観光客一組のみ・・・・

 

強風で洗濯物(友人から貰ったインドネシアのベットカバー)が飛んでいった!

Seldvia・・・初冬のリゾート・・・1

9月13日朝の気象FAXによると820mbの低気圧が接近してくる

ホーマーで時間を潰すより、皆が薦める近くのリゾートへ行くことにする

ハーバー事務所で5日間の停泊料50ドル、軽油50ガロン50ドルの支払いを済ませる

写真上  Gull島、この岩礁の北を行かなければならないのに・・・

ピクニック気分が災いし一つ南の湾に入り込み戸惑う

気を取り直し本来の目的地Halibut Coveへ

写真上  ハリバットコーブ桟橋(プライベート)

レストランの桟橋にはロープは張ってある・・・閉店の様子

個人桟橋に船を着け、お茶漬け昼食

写真上  ムース狩へ

近くで働いていた大工さんが来て「冬が近いから村には誰もいない・・」と言い、彼らは肉不足でこれからカリブー狩りに行くという

私達も今日の最終目的地Seldviaへ向かう

 

14時外へ出ると向かい風SW27メートル!!

急に低気圧の影響が出始めていた

写真上  セルドビア入り口

四時間向かい風と格闘しセルドビア港に滑り込む

船も身体も潮だらけだ・・・Cフロートへ着岸

漁船はほとんど無くプレジャーボートが多い

写真上  潮が引き急なスロープ・・・アラスカでは潮の満ち引きが8メートル位のところもある、当然潮流は早い

 

ほっとしてコーヒーをすすっていると外が騒がしい

近くの桟橋の下で犬が溺れている

加勢に飛び出すが大型犬でなかなか引き出せない

電動工具を出し桟橋の板を外し引き上げた・・・冷たい水だ

船で暖かいシャワーを浴びる

写真上 ダンジネスクラブ(この辺で簡単に採れる旨い蟹)

蟹玉で夕食

写真上  溺れていたのはハリバットコーブであった君だったのか・・・

小さなバーに入ると「犬の救助仲間」いる

風が強く、カリブー狩は明日以降にするという・・・

スコッチをダブルでご馳走になる・・・

 

夜は早くやってきて、風は冷たい

Homer・・・3

今回の旅で最も危険なレグを切り抜けたという達成感を感じている

残るはSewardまでと多島海の入り口Elfin Coveの2レグである

悪天候が2日続き、今までお世話になった方達へ、お礼と近況報告の便りを書いて過ごした・・・これからのルート研究、気力の充填の良い機会である

天候も回復し、空港でレンタカーを借りドライブへ

写真上 美湖さんの丘からホーマーの砂嘴

ホーマーを望む丘に登り撮影していると

写真上 丘からの眺め

洒落たコテージから出てきた長身の男性から声がかかる

「君達は日本人ですか・・・?」

綺麗な奥さんも出てくる

写真上  美湖さん夫妻と

 

Joe&Carmen Meeko夫妻

日本語が上手で、英語の名前のあとに

「美湖」と均整の取れた上手な漢字を書いてくれた

リタイアした米空軍の神父さんで

東京横田基地に勤務し日本語を覚えたという

「ここアラスカ米国で最も美しい所です・・・よくいらっしゃいました・・・」我々のゲストブックに書いてくれた

旅をしていると日本に好意を持ってくれる人の存在は何より心強い

写真上  丘の住宅地

国道に戻りロシア人の村を見学し

レストランでシュリンプカクテルローストビーフで昼食

写真上  ホーマーの海岸を見下ろす

38年前のホーマーでは

波の静かな海岸で自炊、キャンプしたことを思い出す

 

午後はスーパーで食料を買い

船内を片付け戦闘モードへ

夕食は漁港のレストランでブリトーとチキンガレット

気持ちも戦闘モードにしなくては・・・

Homer・・・2

その日の午後、一人の男が訪ねてきた

「8月15日、サンドポイント上空から挨拶したのは・・・私だ・・・」と

ハリバット(オヒョウ)を解体中にホバーリングしていたヘリの人!?

写真上  ヘリコプターのパイロット、Larryさん

「今日はオフなので一緒にフライトに行こう・・・」

写真上  ヘリのフロートはゴムボート素材・・・水にも浮く

写真上  ホーマー飛行場上空

写真上  Kachemak湾に突き出すホーマーの砂嘴・・・先端が漁港

写真上  ホーマー漁港上空

写真上  浮き桟橋中央先端にオンディーヌ

写真上  対岸のPortlock氷河上空

写真上  氷河上のモレーンに着陸

写真上  二人乗りなので妻の番

写真上  無事帰還・・・嬉しそう!

 

夕食に招待した

彼はニュージーランドワイン「Jacob’s Creek」持参、私達の好きな重いボルドータイプ・・・旨し

鮭とポークのバーベキュー、ミートボールの春雨スープ

 

ラリーさんはニュージーランド人だが、アラスカ州政府に雇われ

各地で水揚げされた水産物のサンプルをラボ(研究所?)へ運んでいるという

三年後、息子とヨットで世界一周に出るとプランを語る

長距離航海者のヨットに興味津々の様子だ

アラスカのサーモンシズンが終わると帰国し

夏のニュージーランドで息子とセーリングを楽しむという・・・

 

夜遅く外が騒がしい・・・上空に淡いオーロラが出ていた

Homer・・・1

9月8日、ハーバーマスターが税関へ連絡

新しい航行許可証はヘインツ(Haines)にて発行されると

写真上  RandiさんとボーイフレンドのMikeさん

ハーバーマスターの事務所でRandiさんが話しかけてくる

「あなた達、洗濯物があるでしょう?」

彼女の家で洗濯、その間にレストランで昼食を・・・ご馳走さま

彼女の貯めたクーポン券を持ちスーパーで買い物

Mikeさんが合流し

海図、排水ポンプの部品購入を手伝ってくれる

写真上  猫が店番・・・妻は幸せ・・・舶用部品屋

Mikeさんは漁師・・・この海域の泊地などの情報を貰う

マストを壊したウニマク海峡の強風の話をすると

「No More Unimak Winds!」と共感してくれる

海峡で操業する漁師は怖い思いをしている・・・と

 

ランディーさんはヨットで世界を巡った人・・・旅人の気持ちが解ると言う

「海人(うみんちゅう)」の的を獲た親切は心地よい・・・自分もこうありたい

写真上  ポールの高さが引き潮の深さである

心身ともにリニューアルできた・・・

旅・・・断想

大きな予定は立てるが・・・細部はどうでもいい

季節、地域、海域は重大な要素である

問題の海図は・・・完璧ではないが、何とかいつも手に入る

 

更なる要素は

天候、潮、町、村、人、動物達、補給、修理・・・目的が見えてくる

要素は突然現れ、予定の行動はいつも変わる

写真上  ホーマーの外海に面したテラス

 

常にそう上手くはいかない、束縛される・・・なすがまま!

必然は影が薄くなり、確信は常に危うい

 

どんなに待っても行きたい所は有るし・・・会いたい人がいる

そして突然の出会いに感動する自然、人物、土地があ

写真上  ホーマーの砂嘴の上のシーフードレストラン

 

だから、放浪する・・・

ホーマー(Homer)へ・・・2

9月7日、早朝から漁船全て出港していく

彼らが投錨していた場所に移動し錨を下ろす

さすがにベストポジション!

あまり奥へ投錨すると奥の岸からの返し波が船を揺らす

 

10時の気象FAXを見て私達も出港を決める

低気圧が近づきつつあり

昨夜は風がよく振れ回った

錨はしっかり効くが

水路誌によるとここは「凄いWilliwawが吹く」という

ここでWilliwawをしのぐ勇気はない

 

15時45分、Barren Is.(バーレン諸島)を越え一安心・・・下げ潮なので東側を通過した・・・島に寄せられる心配は無い

写真上  バーレン諸島

Stevenson Entrance(スティーブンソン海峡)を過ぎ、次はKennedy Entrance(ケネディー海峡)を横断することになる

 

この両海峡はAnchorage(アンカレッジ)への入り口にあたり、海流、潮流も早く大型船も難航する海域である

アラスカ本土のキーナイ半島(Kenai Peninsula)の白い山塊がかすかに見える

山塊を高層雲がすごいスピードで覆っていく

チョッピーな悪い波が続く

風上に向かう限界に近い帆走で冷たいスプレーが飛んでくる

写真上  キーナイ半島の白い山々と漁船

妻は弱気に、静かに泣いている

カレーにて夕食

写真上  Iliamna Volcano 10017フィート

19時、北西の風15m、読みどうり潮は反転し上げ潮に乗る、艇速若干上がる

はるか後方に大型船が見える・・・機帆走にし艇速8ノット

21時、Dangerous Cape(危険岬)怖い名前だ

その名のとうり岩礁近くに渦潮が発生している

写真上  ホーマーへのアプローチ

写真上  そして完全に日は沈んだ

 

22時、Homerの町の灯が見え始める・・・勇気湧く

23時、コーストガードにVHF(無線)で入港許可を求める

「湾口南東側に岩礁があるので中央をキープせよ・・・!」と注意あり

24時、舵の効く限界のスロースピードで港口に接近する

24時30分、コーストガードの指示どうり接岸す

暖かいうどんをすすり、シャワーを浴び、ビールを飲んでベットに倒れこんだ・・・本土に着いた!!

ホーマー(Homer)へ・・・1

07時バック湾抜錨、他の船はまだ眠っている

時々ブロー(突風)は有るものの海況は悪くない

 

マーモット海峡(Marmot Strait)へ

「幅2、5海里の狭い海峡、危険な海岸

水深は浅く、潮流は早い・・・」と水路誌に記載されている

西の風16m、いやらしい波がたっている

潮目に海鳥がダイブしている

写真上  コーストガードの船にしばし注視される・・・南に去る

四時間かけ海峡を抜けさらに一時間ほど最悪の波

まだ時間は早いものの少々めげ始めている

Tonki Bayへ逃げ込むことにするも更に大波に苦戦す

 

「錨泊地は西湾と東湾二箇所あり、小型船は東湾の最奥の海岸近くの水深14mの泥の海底に投錨すれば、ほぼ全ての天候から守られる・・・」と水路誌

写真上  錨泊中の漁船

15時30分、東トンキイ湾の中に漁船数隻錨泊している・・・彼らも避難組みたいだ

投錨すると一隻に近すぎる・・・距離を取り移動し再度投錨する

その間暇そうな漁船員達に注視され・・・バツが悪い

二度目の投錨が終わると親指を立てニヤリと笑われた!!

他人の離岸、着岸、投錨作業ほど面白い見ものはない!

船長、クルーの技量が丸見えになる・・・

 

夕食、鮭炊き込みご飯

写真上  月下の錨泊地

右舷西側に月と高い島影・・・記憶してベットのなかへ

深夜、浅い眠りから覚め右舷を見る

高い島影が無い!!

慌てて、周りを見ると左舷にそれは有った

風が逆転していた・・・こんな時何があっても驚く!

コディアック(Kodiak)島出港

2時間ほどで油圧のパイプ交換し

広い海域でテスト航行・・・OK

やはりオンディーヌの舵効きは敏感で、それなりに気をつけたほうが良いとのこと

これ以降、故障はなくなった

 

コディアックベア(アラスカ最大のヒグマ)には会えなかった

 

「カタプール」のパットはヨットをここ上架し越冬させ

家族とフロリダへいくという

8月24日「ハリケーン・アンドリュー」がフロリダに壊滅的被害をあたえた・・・風速68メートル

すでにパットは電話で現地の建設会社と契約し大工として働くそうだ

「出産費用が大きかったからね・・・」と

「来年再出発だよ・・・」と

 

カタプールの一家を招いて

ささやかな、出産祝いをした・・・すき焼き

日本の活字に飢えていた奥さんは本棚の中から

アラン・ボンバール著「実験漂流」を選び読みたいと言う

友人からプレゼントされた古い本だ

まだ読んでいなかったが貸した

 

9月5日(土)鶴田さん母子に見送られコディアックを出港

九日間の滞在中、奥さんには大変お世話になった

車を出して頂きスーパーマーケット・セーフウエイで大量の食料買出し、洗濯、入浴など細かく気を使っていただいた

そろそろ旅に疲れ始めた妻の好い話相手になってくれた

妻の手作りのアップルパイでオンディーヌでのお茶(アフタヌーンティー)も付き合ってくれた・・・有難うございました

 

五時間の航海でアホグナク島(Afognak)のBack Bayを目指す、途中、目の前で鯨が跳ねる

写真上  若干荒れる海を走る「カタプール」

先行していたカタプールが引き返してくる

VHF(無線)で「ワイフの具合が悪いので戻ります・・・」と

我々の見送りがてらバック湾でピクニックを考えていたが

以外に風も波も悪く帝王切開の病み上がりでは無理だろう

「実験漂流」はかえって来なかった

 

ラッコが泳ぐバック湾に投錨

写真上 森の中の錨泊

 

チンジャオロースとイクラ醤油漬けで夕食

妻は疲れて就寝、私はホーマー(Hommer)までの海図を研究

明日からは難コースが待っている

風は無く静かに揺れる・・・夜