Ketchikan・・・国境の町へ

10月24日(土曜日)

07時、メグとリー夫妻は会議のためにKetchikanへ

写真上  二人を乗せた水上機

09時55分、出港、1026mb気圧は上がり続けている
比較的波は静かだが、少々寒い

11時51分、Ship I.南西1海里、1028mb、南東の風12m

13時23分、Caamano Pt.(カマーニョ岬)相変らず流木多し

14時16分、Guard I.西1海里、1029mb、南東11メートルの風・・・いよいよTongass Narrowsへ入る

写真上  レーダーの画像・・・Tongass Narrowsは、ご覧のとうり狭い水道である

レーダーの画像に残像が点々と高速で近づく物体が写る

写真上  早い筈だ・・・水上機が飛んで来る
手を振り挨拶すると翼を振って答礼してくれる・・・

16時20分、ケチカンのThomas Basin に入り仮舫

税関の助言でKetchikan Y.C.(ケチカン・ヨット・クラブ)の桟橋へ移動する

妻、フェンダー装着時、転んだと泣きべそ・・・

ヨット・クラブのシャワーを借りる

妻、ランゲルの美容院で前髪を切りすぎたと不機嫌・・・
多分、疲れているのでしょう・・・

国境の町である、中華料理店で外食・・・チャプスイ25ドル・・・美味い!

Meyers Chuckの夜

強風の朝、デッキ上のゴミをカラスが漁っている・・・始末を忘れていた

写真上  追っても直ぐ戻ってくる・・・老齢のカラスだ

10時の気象用FAXを見ると風は弱まりそう、海賊の委員会(委員長は妻)は「駄目なら帰る・・・」ことにして、出港を決定

10時50分、気温13℃、1008mb、若干のウネリ、航行ルートは風かげで影響なし

12時、Luck Pt.東1.5海里、1009mb、南東9mの風・・・島の森は無残に伐採されアラスカらしさは無い

13時、1010ミリバール・・・気圧の上がり方が早い、南東14m

14時、Narrw Pt.北東2海里、1011mb、南東18mの風・・・風かげが終わり風強く感じる・・・視界良好

写真上  海岸に大量の流木が積み上がっている

Clarence StraitとErnest Soundが交わる海域に、大量の流木が集まり悩まされる

15時、今日の泊地、Meyers Chuckの入り江が狭く分かりづらい・・・入り口に有る筈の岩礁が見つからず緊張する

港内に入ればコンパクトな居心地の良さそうな所だ・・・

写真上  右奥が入り口、狭く岩礁が多い・・・夜の出入港は怖そう

写真上  桟橋側は水上機の滑走水面だ

長身のリーさん来船し、学校のシャワーを使う許可をくれる・・・この学校の教師だった・・・奥さんのメグさんも教師だ

夕食が終わったら自宅へ来いという・・・近くのUnion Bayに住むヨッティー、ベーニーさんも来ていた

メグとリー夫妻の小学校は生徒5人、あと一人減ると閉校になり子供達は通信教育となり、彼らは転勤しなければならない・・・

兄弟二人の家族が引越ししそうで、ここが大変気に入っている彼らの目下の悩み・・・

ハーブ茶と砂糖もバターも使わないクッキーを頂く・・・

写真上  メグとリー夫妻・・・ヒッピー世代?

ヴェジタリアンの彼等は日本の食文化に興味を示す・・・特に豆腐の作り方を教えろと言うが・・・勉強しておけば良かった・・・

自分達で海苔の養殖もしていた・・・乾燥のプロセスを知りたがっていた

船から海苔を持って来てプレゼントする・・・プラスティックみたいと感想・・・

多少心得のある茶道の話になるも、茶道の精神などとなると・・・英語力が問題で話はあまり深まらない・・・残念!

写真上  ベーニーさん

物静かなベーニーさんはUnion Bayも良い所なので来年の夏は是非寄ってくれと言う・・・

そして、カナダに行ったらLasqueti Is.でジャンク風のヨット「中国雲(China Cloud)」のシャリーとアラン夫妻に会うと良いと言う・・・興味深い話を聞けるだろうと・・・

ラスケチ島はヒッピー文化の島で、化石燃料を極力廃し、風力や太陽光発電で暮らしているそうだ

ベトナム戦争当時は沢山の脱走米兵士をかくまった伝説の島と言う

これから南下して、頼りになりそうなヨット仲間を何人か紹介してくれた・・・

夜遅くまで話込む・・・英語に疲れたが良い雰囲気の歓談だった

Coffman Coveのレイジーな3日間

10月21日、06時起床、06時30分出港するも海は大荒れ

海賊船長(私)は委員会(妻と私)の意見を受け入れ出港中止

名著「カリブ海の海賊たち」の影響が抜けない・・・

入り江の中は静かだ・・・

 

次の低気圧が以外に早く来ているようだ

写真上  プライベート水上機・・・しっかり舫っている・・・

こんな天気の中でも、定期便の水上機は飛んでく

写真上・・・一日2便飛来する

終日読書と、昼寝・・・

 

翌朝も強風・・・この風は気圧が上がり始めたためか・・・?

水中考古学の本「海の秘宝物語」三杉 隆敏、なかなか興味深い本だ

もう少し、掘り下げた本も読んでみたい・・・

「海のシルクロード」戸川安雄、まとまりの無い本で眠くなる

写真上  スモール・ボート桟橋

ハーバーマスター氏やって来て、7ドル(係留一泊分)徴収・・・

「一週間、居ていい・・・」との事・・・一日1ドル?!

 

夕食のチキン・ソテー・・・絶品!

写真上  風は大分治まってきた・・・

原木積み出し港・・・Coffman Cove

朝から雨だが昨日の気象用FAXを見て出港を決める

ランゲルには4日滞在した

ハーバーマスターは電気代のみの請求30ドル・・・係留料は要らないと

 

08時40分、出港、沖に霧、雨雲も低く朝の高原の風情だ

森の伐採された跡が、みすぼらしい・・・

写真上  運搬船から落水した丸太が岸に打ち上げられている

集めれば一財産だ・・・ネイティブはこれを薪にして売っている・・・

11時27分、Round Pt.で流木に激突!流木多し!

写真上  流木、注意はしているが見え辛い・・・プロペラが心配だ

 

12時41分、Pt.Harrington

日が差して暖かいと思ったら、急に強い雨が降り直ぐ止んだ・・・

相変わらず流木が多い・・・入り江を遡る

14時55分、コフマン・コーブの桟橋に到着

写真上  対岸はログ・キャンプ、筏が係留されている

 

写真上  観光よりも産業的要素が強い港だ

川の水が混じり茶色の海面・・・

筏が組まれ海面に浮いている・・・小さい港だ

写真上  伐採現場は入り江の奥・・・筏にして引き船で運搬

木枠の中で貯蔵し運搬船の積載を待つ・・・

 

ハーバー・オフイスの雑貨店で生牡蠣を買う

夕食、前菜は殻付焼き牡蠣、そして牡蠣フライ

身はホッコリと厚みがあり、ジューシーで牡蠣の濃厚な香りがする・・・

冷やしたドライな白ワイン「シャブリ風」を・・・何個か食べ、ワインでリフレッシュし、また食べる・・・至福の夕餉だ

 

Ketchikan(ケチカン・アラスカ南端の港)まで60海里

海象がよければ明日、直行しよう・・・!

Wrangell (ランゲル)で足止め・・・4

昨夜半から南西の強風・・・25m、ミゾレは雨になる

気圧899ミリバール!!

 

「カリブ海の海賊たち」 (新潮選書)クリントン・V. ブラック (著) 増田義郎 (翻訳) ・・・読了

内容は非常に面白いが、翻訳が今一つで読解に苦戦した・・・

海賊たちは以外にも民主的に、委員会で物事を決めていた・・・!

そして、ヤッパリ、女海賊の方が残酷だった・・・!

写真上  ハーバーマスター事務所

写真上  水上機・駐機桟橋

写真上  ランゲル・メインストリート

写真上  学校帰りの子供達

13時を過ぎると風も治まり陽光もこぼれる

76Lubricants Company(給油所)のシャワーが無料で使える・・・ありがたく使わせてもらう

気分一新、散歩へ・・・

写真上  住宅地の対岸トーテムポールの丘

写真上  港の小島に建つトライバル・ハウス(種族の家)

ロシア人が入植する前から、この港の中の小島がネイティブ・コミュニティーの中心地だったのだろう

写真上  トーテムポールの熊

写真上  鳥族?

 

夕食、ボルシチ、サラダ、クロワッサン・・・スパーマーケットの恩恵なり

Wrangell (ランゲル)で足止め・・・3

「沈殿」クライマー仲間は悪天候などで行動できない状況をこう言う

「沈殿」の朝寝坊は幸せである・・・桟橋から電気もとれる

写真上  インナーハーバーと陸電のポスト

インナーハーバーは港内の小島の影にあり浅く、ヨットは入れない

写真上  トーテムポール・・・左はオルカ、右は熊

 

電気ヒーターは温かく静かである・・・読書灯も陸電で明るい

昨夜は遅くまで読書

井伏鱒二「ジョン万次郎航海記」そして「本日休診」好きな作家だ

 

寒いが郵便局へ・・・読み終わった本をニューヨークの友人へ送る

小雪ちらつく・・・

写真上  街中の教会

 

午後、色川大吉「ユーラシア大陸思索行」を読み出す

詰まらない本だ・・・題名は素晴らしいのに・・・

 

気分を変えて、ウイリアム・カッツ「マンハッタン連続殺人」

私のなじみの街で事件が起き、抑制の効いたストーリー展開が好い

古いN.Y.のモザイク・タイル張りの薄暗く少し甘い香りのする廊下、

重い分厚いドアには3~4箇所鍵が付いている・・・

砂岩を削り出したビルのデコレーション、入り口の階段に座る老人・・・

行間にニューヨークのウエストサイドを思い出す・・・

 

いつか外は湿雪の本降り、甲板はシャーベット状になっていた

夕食はポテトコロッケ・・・妻は私に「三人前は食べた・・・」と

ホクホクで温かで旨かった・・・そして、また読書・・・

 

Wrangell (ランゲル)で足止め・・・2

航海への日和待ちである

それならば、するべき仕事を片付けよう

旅はロマンだけでは前へは進まない・・・日々の暮らしがある

写真上  トーテムポールとアウターハーバー

気温が下がると、船内に結露が出来始める

被害が出始めているのは書籍類だ

水路誌以外でも200冊以上の本を積んでいた

 

一旦、収納場所から出し船体の間に断熱材入れる

船の中央テーブルに本の山が出来る・・・ダメージのある本は乾燥する

読み終わった本は奥へ

読んでなかった本の分類作業は進まない

随分前に興味を持ち購入したが読んでいない本が多い

古本屋の立ち読みみたいに・・・作業は進まない

 

清水の汲み上げポンプの不調も直したいし・・・

写真上  地元新聞社の記者登場・・・可愛いラッコに似ている・・・?

Wrangell Sentinelのルイス記者

この島に初めて来た日本のヨットだと言う

旅の動機やエピソードなど取材される

私達は観光や生活情報をもらう

妻は美容院を探していた・・・二軒あるそうです・・・大きな街だ

 

夕食・・・ハリバットのトマト煮込み他・・・美味!

 

夜、船体をノックする音

「我が家の猫が、おたくのスキッフ(小船)の下に・・・」と

妻張り切って出て行くが・・・

飼い主の「キィリー、キィリー・・・!」の声で桟橋にダッシュし消えた

Wrangell (ランゲル)で足止め

気象用FAXを受信、天気は大きく崩れそうだ

天気図上  我々の現在地は右の低気圧の寒冷前線と温暖前線の交点

 

港は自然の入り江で、港外からのウネリは防波堤に守られている

冬が迫り先を急ぐ旅ではあるが休息も好いだろう

 

私達のアメリカ滞在ビザのリミットも迫っている

B-1/B-2というビザを取得している

5年間の許可だが、6ヶ月以内に米国外に一旦出国しなくては失効する

7月に入国しているので12月には出国しなくてはならない

今日は10月16日だ、アメリカ最後の港Ketchikanまでは実質4~5日あれば辿り着ける

ここでノンビリしても10月末には出国できる計算だ・・・

写真上 ランゲル・・・トーテムポールの顔

左耳がとれているが熊だそう・・・

写真上  メインストリート・・・なんだか寂しい街だ

心に残るヨットの映画 「冒険者たち」

寄り道して、ヨットの映画の話を。

ヨットと映画と言えば、何と言っても「太陽がいっぱい」でしょうが、一番ヨットマンに愛されている映画は「冒険者たち」ではないでしょうか。「レティシア」という名前のヨットもよく見ます。

レティシアというジョアンナ・シムカス扮する美しい女性は、現代アートに挫折し、アラン・ドロンの飛行機乗り、リノ・ヴァンチュラのレーサー、3人でヨットに乗って宝探しに行く話しで、実にロマンに溢れています。

この映画がヨットを始めたことには、かなり影響し、私たちも宝探しを本気で考えたこともあるくらいです。

その他に実話を元にした「ダブ」、「ロマンシング・ストーン」のラストシーン、ニューヨークだったか、高層ビルの谷間をヨットが通るシーンも忘れられません。

そして面白かったのは、「ライオンと呼ばれた男」清掃会社の社長だった男ジャン・ポール・ベルモンドがヨットでアフリカへ行く話しです。荒れた海で、彼がヨットのキッチンの前の床に座り、フライパンで食事をするシーンは、リアルで「そうだそうだ」とうなずけました。

もちろん「太平洋ひとりぼっち」も忘れてはいけないでしょう。

最後にヨットの映画ではなく、帆船もので「マスター・アンド・コンマダー」も好きな映画です。また、映画ではないのですが、BBC制作の「海の勇者 ホレィショー・ホーンブロア」は何度見ても心が躍る大好きなドラマです。

 

船長の一言

映画は、9割が詰まらなくても・・・ほんの少しでも私の心にリアルに、或いはロマンティックに記憶に残れば・・・一瞬でも共鳴できれば見る価値があり・・・私はそれで好い。

「ライオンと呼ばれた男」は、あのシーンだけで充分楽しめた。

旅をしていて、海辺の城砦や要塞の廃墟を見ると「冒険者たち」を思い出す・・・「ダブ」が自分のヨットに火を点けるシーンは、旅に疲れ挫折しそうな焦燥感を共感できる・・・

「太陽がいっぱい」の高級木造ヨットを見ると、あの船の価格やメンティナンスに掛かる費用を想像するだけで・・・そこは自分の住む世界とは違いすぎる絶望感に襲われ、殺人を犯す青年に共感する・・・貧乏なヨットマン(私自身)がここに居る・・・

そして「海の勇者 ホレィショー・ホーンブロア」数々の叢話の中で、士官登用口答試問のシーンは私自身を試されている様な迫力があった。

動力の無い時代、帆船を運用し、なおかつ戦闘をする知恵と、勇気にヨットマンなら誰でも魅せられるだろう・・・そして尊敬できる上官の下、数々の試練を乗り越えて成長していくホレィショーにエールをおくりたくなる・・・

本物の帆船が風を得て、疾駆するシーンは何度見ても飽きない・・・

Wrangell Narrows(ランゲル狭水路)

10月15日、06時30分起床、寒い朝、ゴミをだす、桟橋に凍った犬のウンコ

07時32分、エンジンをしっかり温め出港、今日のコースはエンジンが頼りである

21海里の狭く浅い水路に、66個もの立標やブイ、灯台が並ぶという

当然、潮流の影響も多く受ける・・・

写真上  右側の陸地がピータースバーグの町

写真上  64番立標付近で潮待ち

全体のイメージとしては、満潮に近い時間帯に連れ潮で通り抜けたい

写真上  大分明るくなる・・・海鳥達も動き出す

写真上  水路を覗き込む・・・若干の朝靄

霧で視界が悪い場合、航路を外し錨泊するルールだ

写真上  62番浮標

08時05、満潮少し前に水路に入る

写真上  幸い視界良好・・・一度に沢山の標識が目に入る、混乱しそう

詳細な海図と照らし合わせ、標識の番号を一個一個潰して行く

目測による航法はしばらくぶりなので・・・少々戸惑う

写真上  44番立標、潮が引き始めた・・・連れ潮

写真上  10時33分、34番立標のメンテナンス

立標の先端に作業員が乗っている・・・電球の交換?

立標に負担が掛からないよう上手に船をコントロールしていた・・・

ブイや立標の位置誤差は5日に一回調査、調整をしているそうだ・・・

 

老朽化した標識が多くメンテナンスも大変だろう

また、海図より浅い所も散見され浚渫も必要だろう・・・

潮流の影響か、2、3箇所「ヤバイなぁ・・・!」と感じる箇所が有った

とにかく海図と標識に忠実に航行することが大事だ・・・

自己判断は事故の元だ

写真上  一番立標・・・10時50分、水路を抜けた

この水路の制限速度は7ノットだ、最短時間で抜けたことになる

 

12時39分、Vank I.の南0.25海里で複雑な潮流

13時50分、Wrangell着岸

さすがにロシア領時代からの港、自然の地形をうまく利用した良港である